○景観形成事業について 佐賀県唐津市
1.事業の概要
平成16年度から、旧唐津銀行を中心に昭和・大正の町並みを再現する事
業を展開。
唐津ならではの資源を活用し、これまでのイベント開催や買い物客のため
の環境整備を越えて、観光客誘致も含めた「賑わいの商店街づくり」を目指
す。
唐津市は毎年11月に開催される「唐津くんち」などを通し、町の結束力
が強いことが利点。自宅や商店の増改築に際してもこのことが力を発揮し、
「自分勝手な増改築を慎む」という運動が軌道に乗った。
旧唐津銀行の建物は、唐津出身で東京駅の建設を監修した建築家辰野金吾
氏の手による由緒あるもの。平成10年に国の登録有形文化財に指定、同1
4年に市指定重要文化財となっている。
唐津市の場合、「良い物を買う」客は高速バスで1時間、運賃600円で行
ける福岡に行く。「ちょっとした買い物」ならば郊外の大規模店に向かう。そ
こで商店街は衰退する、という流れだった。逆に、唐津市の観光資源を活用
すれば、福岡や佐賀から日帰りの観光客が見込める、との視点に立った。
2.事業の詳細
・ 商店街組合、又は5人以上の商業者グループを対象として、商店街増改
築に補助を行う。店の正面部分のみを対象。
・ 事業費 1250万円/年 1店舗限度額250万円
・ 県「がんばる商店街施設整備事業」からの1/2補助がある。
→2/5市補助、2/5県補助、1/5本人負担
・ 当初、ほとんど自発的な応募がなく、市から説得に歩いた。
・ やがて応募者も増え、選択に当たってはなるべく地理的に近接している
ところを固めた。H18年度予定はすでに20件の応募あり。県に対し
て補助金枠の増強を要望しようとしている。
・ 改修に際しての条件は、
ア 屋根は現存瓦の復元で和瓦
イ 外壁は石、木、煉瓦、漆喰等の材質感の仕上げ
ウ 樋は黒又は茶系
エ 格子、窓、看板、のれん、シャッターに統一感
オ 空調機室外機に格子等による目隠し
3.感想
説明によると、商店主からは「建物がきれいになれば気分も違う」と、ま
たこれまで来たことのない人からも「一度行ってみたい」との声が聞かれる
ようになったとのこと。全国散歩道百選にも選ばれ、商店街は活気づいてい
ました。
市役所で説明をいただいた後、実地に商店街を案内していただきました。
商店街全体からすればまだまだ一部の実施で、統一感というところまでい
きませんが、店には「大正・昭和の街再生中です」ののぼりが立ち、元気の
良さを物語っていました。
とりわけ目を引くのが旧唐津銀行の建物。先日、丸亀市の商店街から丸亀
高校記念館まで、「探検隊」の催しがあって同行しましたが、失礼ながら最近
私も商店街にあまり足を踏み入れず、専門家からの説明をいただかないと通
り過ごしてしまう町並みの中にも、たくさんの「資源」があることを再発見
させられました。その中に百十四銀行の建物もあり、それが明年に向け、T
MOを中心に、シルバー人材センター、猪熊弦一郎現代美術館との協力でに
ぎわいの拠点として再スタートが切られようとしているところです。旧唐津
銀行のように重要文化財に指定されることはなくとも、ぜひこれを成功させ
たいものです。
商店街の一角に、軒にずらりとTシャツをぶら下げた店が目を引きました
ので覗いてみました。いわゆる「名物おやじ」というのでしょうか、唐津く
んちに出される山車を手作りで染め上げている、こだわりの職人さんがご当
主でした。以前、犬山市の城下の商店街再生の姿を視察したときにご挨拶さ
せていただいた、これまた名物おやじらしい、活発なスタッフの方々がいた
ことを思い出しました。
いま、丸亀市の財政状況は、とてもこのような個別の商店街の増改築に補
助金を新規に設定できるものではありません。唐津市が県の補助事業とリン
クさせて事業展開しているように、今般の百十四銀行建物の活用でも、首尾
よく宝くじの助成金を活用できる目途が立ったようです。これからも限りあ
る財源の中で市民の合意、理解にも努めながら、まずは丸亀市の商店街に眠
る潜在的な資源を、体系的に掘り起こしていく作業が必要ではないかと感じ